『格闘する者に〇(まる)』三浦しをん

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作者のデビュー作。いきなり童話から始まる。どこかの国の王女がお見合いのために象を選ぶ。象はそれを飼う男性を象徴していて、という話。よく分からないけど、読んでいく内にそういうことなのかな、と思う。

出版社志望の大学生藤崎可南子が就活に苦労する物語。本とマンガ好きの作者が出版社への就活を行っていたことが、この作品に反映されている。複雑な家庭(母は亡くなっていて父親は婿養子の政治家で家にいない。家にいるのは継母と母違いの弟)の可南子は文学部で、同級生の砂子、二木君と遅ればせながら就職戦線に参加する。

 

集A社、K談社と会社名が分かってしまう会社の面接がハイライトの一つになっている。K談社の面接官がひどく、真相は分からないけど作者の本が講談社から出版されていないのは、そういうことがあったのかと思わせる。

藤崎家の後継問題(可南子は政治家になりたくない)や60を超えた書道家との恋など盛り沢山の内容も楽しめる。可南子もマイペースだが、同じくマイペースの友人とのやりとりやユーモラスな描写、テンポの良い会話がうまい。抜群の才気を感じさせて、デビュー作でこれほどのものを書けるのは凄いと感じた。