『騎士団長殺し』村上春樹

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突然妻に別れを切り出された主人公の肖像画家の「私」は、友人の父(日本画家)の自宅兼アトリエに住む。そこで次々に起こる不思議な出来事に巻き込まれていく。

物語のフレームは、私と妻(ユズ)が夫婦の危機を乗り越えて、ということだが、本作品は私が過去を回想して書いていて、これは冒頭に明かされる。

 

ファンにはなじみ深い作者のテーマ、モチーフが多く登場して総決算の様な感じだ。異界との出会い、様々な音楽と美味しそうな料理、謎めいた女性、消失する何かなど。カクテルのバラライカウォッカコアントローとレモンジュース)や「完璧なオムレツ」がおいしそうで印象に残る。

現実と非現実の世界をつなぐ「穴」と、その底に入り自分の闇と向かいあう私も、既視感がある。
あらすじには触れないが、ひとつだけ言うと、秋川まりえは私の妹の、物語的な意味での生まれ変わりだと思う。

 

謎が多く登場するシーク&ファインドの物語で、とても面白くて楽しめた。