『ウォーク・イン・クローゼット』 綿矢りさ

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久しぶりに再読。表題作の主人公早希は28歳のOLで、少し前に別れてから恋人を探している。彼女が武器とするのは男性受けのいい清楚系ファッションで、クローゼットの服を戦闘服に見立てて、いろんな男性相手にデートを重ねる。幼馴染のタレントだりあや、昔フラれた年下のショップ店員のユーヤと共に物語は進行する。

 

主人公は、他人からどう見られるか、を気にしていて、そのせいもあって恋愛がうまくいかない。少し空しく感じるあたりの描写は上手い。

ある騒動で親友だりあが追いつめられる。最後までハラハラする展開で楽しめる。
この2人は、作者の最新作『生のみ生のままで』の逢衣と彩夏に繋がるような気がしたけど。

 

もう一つの『いなか、の、すとーかー』は不気味な話で、東京から郷里に帰った陶芸家が、ファンの女性ストーカーに悩ませられる。主人公が予想外の反応に戸惑うところはリアルだった。
作者も10代でデビューして注目され、思いがけない受け止められ方などに悩んだことがあるだろう。そうした経験が反映されているのかと感じた。