『かわいそうだね?』綿矢りさ

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この本には表題作と『亜美ちゃんは美人』の2作が入っているが、表題作『かわいそうだね?』についての感想だ。

 

恋人の隆大が元彼女のアキヨ(求職中)を自分の部屋に居候させることになり、いろいろ悩む樹理絵(主人公)の話。ありえないような奇妙な三角関係だが、作者の筆力が素晴らしく最後までスラスラ読める。

普通なら隆大は「こんな状況になって申し訳ない、許してほしい」と言うところだが、
樹理絵の方が、より自分を好きだと分かっているから「許せないなら別れる」と強気に出て、したたかというかズルいところだ。

 

クリスマスイブに隆大は、深夜にこっそりプレゼントを置いて帰ろうとする。アキヨに気を使っているのかもしれないが、それは無いだろうと思う。まあ美味しいレストランで食事をして渡す、という展開が無いのは分かるが、樹理絵が気の毒になる。

樹理絵を応援していて、最後の樹理絵の行動には爽快感を覚える。『手のひらの京』もそうだが、タンカを切る描写はとても上手くて感心した。