『私が語りはじめた彼は』 三浦しをん

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この作者は久しぶりに読んだ。フォロワーの方のお勧めだ。

 

6短編の連作集で、中心にいるのは村川という大学教授。彼は表舞台には登場せず、内面が語られることは無い。女性たちは彼に惹かれるのだが、どこに魅力があるのか謎だ。

物語は彼の周りの男性たちが語る形式で進んでいく。大学の研究室の弟子、息子、娘の婚約者、再婚相手の娘の隣人などが登場するのだが、語る人物によって彼の姿は変化していく。

 

作者がの初期の作品だけど、構成が巧い。真実が見えない中、彼に振り回される人々、男女のドロドロした関係を抑制されて静謐な筆致、研ぎ澄まされた文章で紡ぐのは見事だと思った。

この作者の初期作品の『月魚』が積読にあったので、また読んでみたい。

(追記)
あとこの作者の『舟を編む』の映画を見逃してるのに気づいたので、今度観たい。原作と映画を両方楽しむのが好きだ。去年よかったのは『アイネクライネナハトムジーク』や『愛がなんだ』。その他『ティファニーで朝食を』など。