谷崎潤一郎『細雪』

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この作品は以前読んだことがあったが、『手のひらの京』(綿矢りさ)、『あの家に暮らす四人の女』(三浦しをん)がこの作品を下敷きにしていて、再読したくなった。

 

大阪船場の旧家(蒔岡家)の四人姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子の人間模様、戦前の関西上流社会の生活文化が、ゆったりとした時間の中に描かれる。京都での花見など四季折々の行事の描写が美しい。

三女雪子のお見合いが軸になっているのだが、前に読んだときは雪子は可憐だという印象があった。しかし今回読んで、はにかみ屋で口数は少ないのだが、最後は我を通すところが可憐とはちょっと違う感じがした。そうはいっても魅力的なのだが。

幸子の夫の貞之助は好印象だった。婿養子で蒔岡家に入ったのだが、自分の家庭のこと以外の、雪子の縁談や妙子の問題などについて奔走していて好感が持てる。仕事がそんなに忙しそうでない感じで羨ましい。


こいさん(末娘)」など今は聞くこともない船場言葉での会話が印象に残る。最後は第二次世界大戦前で次第に緊迫していく時局と共に、こうした贅沢で華やかな文化が終わっていくことを予感させて切ない。長く読み続けられるだろう名作だ。

 

(追記)
映画にしたら四姉妹のキャスティングは、というので雪子、妙子をTwitterに書いた。
残りの鶴子、幸子はとても難しかったのだが雪子、妙子と共に書いてみよう。

鶴子:松たか子、幸子:竹内結子
雪子:蒼井優、妙子:橋本愛

ちょっと違うかな。まあ好きな女優を並べた感じになってるが。