2019-01-01から1年間の記事一覧

『私をくいとめて』 綿矢りさ

久しぶりに再読した。綿矢りさは好きな作家だけど、新作が出るのが先になりそうで、それまではこうして読み返している。小説以外の、エッセイとか書いてくれるといいんだけど。 主人公みつ子は32歳の独身OLで、どちらかと言うとひとりが気楽、恋人はいなくて…

『乳と卵』 川上未映子

先にツイートした作者の村上春樹へのインタビュー(『みみずくは黄昏に飛びたつ』)を読んで、芥川賞を受賞したこの本に興味があったけど、まだ読んでいないのを思い出した。 最初はとても長くて、饒舌な文体に戸惑った。でも読んでいるうちに巧みにコントロ…

『ウォーク・イン・クローゼット』 綿矢りさ

久しぶりに再読。表題作の主人公早希は28歳のOLで、少し前に別れてから恋人を探している。彼女が武器とするのは男性受けのいい清楚系ファッションで、クローゼットの服を戦闘服に見立てて、いろんな男性相手にデートを重ねる。幼馴染のタレントだりあや、…

映画 『ノルウェイの森』

この映画の原作を愛読している。最も好きな小説の一つだ。映画は映像は美しいのだが、イメージが固まっているためか不満が残る。 直子(菊地凛子)が僕(松山ケンイチ)に「私のことをいつまでも忘れないでくれる?」と言うのは、最後の方ではなく原作通り最…

『意識のリボン』 綿矢りさ

8編が入った短編集で再読。恋愛についての小説が多い作者だが、この作品は恋愛ではなく日常を様々な視点で書いている。 太宰治を思わせる饒舌な独白の『こたつのUFO』が面白かった。作者は太宰治が好きだと書いていたのを思い出した。 『履歴の無い女』はマ…

『屍人荘の殺人』 今村昌弘

今度12月に映画化される原作を読んでみた。 ホラー小説の題材を使ったミステリだが、文章は軽い感じで読みやすい。 大学ミステリ愛好会の葉村譲と明智恭介は、同じ大学の探偵の剣崎比留子と共に、映画研究会の夏合宿に参加する。映画研究会に脅迫状が届いて…

『上流階級 富久丸百貨店外商部 其の二』高殿円

第一作に続いて第二作を読んでみた。フォロワーの方のお勧めの本だ。 外商部で働く主人公(鮫島静緒)がお客からの難題に立ち向かうお仕事小説。外商部という一般になじみのない世界をリアルに描写している。 今回は、主人公と同僚の桝家修平が感じる孤独、生…

『伊藤くんA to E』 柚木麻子

『幹事のアッコちゃん』に続いて柚木麻子を読んでみた。 5編の連作短編集の恋愛小説。2018年に映画になっているのだが、これは観ていない。 テンポよく話が進んで楽しめるけど、伊藤君はリアルさを欠いていて、ちょっとよく分からない彼は謎めいている。何と…

『幹事のアッコちゃん』 柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『3時のアッコちゃん』に続くシリーズ第3弾。 「東京ポトフ&スムージー」の社長として活躍するアッコさんだが、相変わらず面倒見がいい。しかし、今回は違った一面を見ることができる。 それでもストーリーはいつものパターンなの…

『上流階級 富久丸百貨店外商部 其の一』高殿円

フォロワーの方のお勧めの本だ。 兵庫県芦屋市の百貨店を舞台に、外商部で働くことになった主人公(鮫島静緒)が、多額のノルマを抱えながら奮闘する姿を描くお仕事小説。 バイトとして洋菓子店で働いていたところを、優秀さを買われて引き抜かれた主人公な…

『スリーピング・マーダー』アガサ・クリスティー

久しぶりにアガサ・クリスティを読んでみた。 ニュージーランドから英国に来た新婚の妻グエンダは、夫と二人で家を探していた。そして一目で気に入ったヴィクトリア朝風の新居になぜか既視感を抱く。初めての家のはずなのに、石段、ドアなどを知っているよう…

『盲目的な恋と友情』辻村深月

この作者の作品を『鍵のない夢を見る』に続いて読んでみた。フォロワーの方に教えてもらった本だ。 「恋」と「友情」の2部構成で、大学の管弦楽団が舞台になっている。冒頭の結婚式の場面から、不穏な空気が漂う。 「恋」では、蘭花とプロの指揮者茂美の恋愛…

『鍵のない夢を見る』辻村深月

積読にあった本で、この作者は初めて。フォロワーの方が読みやすいと言っていて、その通りで楽しめた。もっと早く読むんだった。 ミステリー的な5作の短編連作集。高い文章力、ストリーテラーとしての素晴らしい才能を感じた。直木賞を受賞したのも分かる。 …

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』村上春樹

先週「村上RADIO」を聴いてたら、ゲストの山中伸弥教授がこの本について話していて、久しぶりに再読してみた。このラジオ番組には他に高橋一生も出ていて、村上作品を朗読していたのだが、とても上手いのに驚いた。 名古屋の高校に通う男女5人-乱れなく調和…

『遠い山なみの光』カズオ・イシグロ

作者のデビュー作で久しぶりに再読した。 題名は作品に出てくる実際の山並みのこともあるだろうが、遠い記憶も指している感じがする。 長崎が舞台になっている。作者は長崎に生まれて5歳の時に家族とイギリスに渡っている。故郷-どこまで覚えているか分から…

『百の夜は跳ねて』古市憲寿

この作者の小説は初めてだ。評論は新書で何冊か読んだことがあるけど。 就活に失敗して高層ビルのガラス拭きをしている若い男性が主人公。幻聴に悩み、生きている実感をなかなか持てない。 生まれるのも死ぬのも禁止されている島の寓話から始まる。生死がテ…

映画 『ダンスウィズミー』

矢口史靖監督のコメディ・ミュージカル、そしてロードムービー。 子供の時の経験からミュージカル嫌いになったOLの鈴木静香(三吉彩花)は、マーチン上田(宝田明)の催眠術にかかって(これはいかにも怪しげだが)、音楽を聞くと歌い踊る体質になってしま…

『江戸川乱歩名作選』 、『黒猫・アッシャー家の崩壊』/ 『モルグ街の殺人・黄金虫』ポー

江戸川乱歩は他の文庫を何冊か持っているのだが、この『江戸川乱歩名作選』は知らない作品があるのと、フォロワーの方がツイートしていて面白そうだったので購入。プレミアムカバーが綺麗だ。 どれも楽しめたが、『目羅博士』と前から好きな『押絵と旅する男…

『軽薄』金原ひとみ

この作者はTLではあまり見ないけど、『蛇にピアス』が印象的で才能を感じたのを覚えている。『軽薄』が積読にあって読んでみた。 18歳の頃の事件にトラウマを抱くカナ(29歳)が主人公。夫と息子がいて、スタイリストの仕事もやりがいがあるのだが、米国から…

『マチネの終わりに』 平野啓一郎

読みかけて積読にしてあった本。映画化されると知って引っ張り出した。 主人公の蒔野は天才クラシック・ギタリスト。ヒロインの洋子は海外の通信社に勤務する国際ジャーナリスト。洋子は美貌で有能、内戦でテロが頻発するイラクの特派員を志願するほどだ。 4…

映画 Dinerダイナー

藤原竜也がシェフの、殺し屋専用のダイナー(食堂)を舞台にした話。 咲き乱れる花々、舞い散る花びら。スキンのスフレ、特製バーガー等の色鮮やかな料理。怪しい殺し屋たちの死を感じさせるセクシーさ。 蜷川実花監督の映像美を楽しむ作品で、特に窪田正孝…

『けむたい後輩』柚木麻子

積読にあった本で、フォロワーの方が読みやすいと言ってたのもあって読んでみた。 女子大を舞台に、14歳で詩集を出した経験のあるプライドの高い栞子と、彼女の前に現れた二人の後輩の話。 後輩の内、栞子を崇拝する真美子の4年間を軸に進んでいく。もう一人…

『生のみ生のままで』綿矢りさ

綿矢りさの久しぶりの新刊。逢衣と彩夏は、25歳の夏に出会い恋に落ちる。二人とも恋人がいて、特に逢衣は結婚が近い感じだったのだが。幸せな日々が始まるけど、ある事件をきっかけに状況は一変して、という物語。 女性同士の濃密な恋愛物語だが、作者は『ひ…

『日本史の論点』中公新書編集部

新書をブログに載せるのは初めてだ。世界史は割と好きで、そういえば受験も世界史(と地理)だった。世界史に比べると日本史はそこまで好きじゃない。 少し前に、話題になっていた『応仁の乱』(中公新書)を読んだけど、正直よく分からないところがあった。…

『ナイルパーチの女子会』柚木麻子

積読にあった本で久しぶりに柚木麻子を読んでみた。大手商社勤務の栄利子と人気主婦ブロガーの翔子、女友達がいない二人は急速に親しくなるが、ある出来事をきっかけに不協和音が生じて、という物語。 前半の山場が、関係が悪くなった二人が夜のファミレスで…

『アイネクライネナハトムジーク』伊坂幸太郎

この作者の作品を読もうと思っていたのだが、最近『愛がなんだ』の今泉監督の次の映画の原作がこの本と知って読んでみた。今泉監督からは、『愛がなんだ』の映画と原作(角田光代)のツイートにいいねをもらい好印象を持っている。 恋愛物なのだが、軽い連作…

『愛がなんだ』角田光代

映画の原作を読んでみた。濃密な片想いの女と冷淡な男(テルコとマモル)とその反対の関係の男女(ナカハラと葉子)、そしてマモルが追いかけるすみれ、という5人の物語。 作者はインタビューで「好きな人ができたら全開で好きになっちゃって、相手に怖がら…

『モダン』原田マハ

ニューヨーク近代美術館(MoMA)を舞台にした短編集。『ジヴェルニーの食卓』に続いてもう1作読んでみた。 登場するのはアンドリュー・ワイエスの「クリスティーナの世界」、ピカソの「アヴィニョンの娘たち」、「鏡の前の少女」、「ゲルニカ」、ルソーの「…

『私の家では何も起こらない』恩田陸

恩田陸が面白いのでもう1作読んでみた。この本もフォロワーの方のお勧めから。 丘の上の幽霊屋敷を舞台にした連作ゴーストストーリー。時代ごとに住人が変わる古い屋敷で、英国だとヴィクトリア朝の屋敷という雰囲気がする。そして生々しく恐怖心をかきたて…

『チョコレートコスモス』恩田陸

『蜜蜂と遠雷』がよかったので、もう1作恩田陸を読んだ。この本にしたのはフォロワーの方のお勧めを参考にして。 『蜜蜂と遠雷』でも感じたけど、この作者は天才を描くのが上手い。後半に向かって盛り上がって、2人の女優-東響子、佐々木飛鳥-のオーディシ…