『あの家に暮らす四人の女』三浦しをん

f:id:t_ikeda:20190210213004j:plain

 

この作者の作品は初めて読んだ。

谷崎潤一郎の『細雪』を下敷きにしている。『細雪』の四人姉妹にちなんだ名前を持つ4人の女性たちが、古い洋館で共同生活をする。
洋館の持ち主の鶴代と佐知は親子だが、雪乃と多恵美は訳あってこの家に暮らす。4人の独身女性が生活する中、山田という敷地内の守衛小屋に住んでいる老人が、何かあったらやってくる。

穏やかに流れる日常に、時々事件が起こるところは『細雪』のようだ。喜びや驚きの心情がユーモラスに、また繊細に描かれる。

語り手が何度か交替したり、いきなり喋りだすところが面白い。こうした人称の変化は初めてで新鮮だった。

 

女友達との共同生活は、様々な固定概念から自由になった一種のユートピアといった感じがする。そして最後の余韻の残し方はうまく、『細雪』を思い起こさせる。

作者の温かい視線が感じられて、よい読後感が残る。この作者の別の本も読みたくなり、どれにしようか考えているけど、よく知らないので迷っているところ。