『軽薄』金原ひとみ
この作者はTLではあまり見ないけど、『蛇にピアス』が印象的で才能を感じたのを覚えている。『軽薄』が積読にあって読んでみた。
18歳の頃の事件にトラウマを抱くカナ(29歳)が主人公。夫と息子がいて、スタイリストの仕事もやりがいがあるのだが、米国から帰国した甥(19歳)と不倫関係になる。
恵まれた環境にいるカナがあっさりと不倫に走る背景には、カナが日常で感じている違和感、虚無感がある。カナはこうした感情を埋めることができず、甥との危うい関係を続けながら、将来の展望を模索する。
この辺りの描写は見事で、2人の関係はよく理解できないなと思いつつ、作者は抜群の筆力で読ませる。
ラストは、これは賛否があり納得できない読者もいるだろうが、これまで生きてきた世界から抜け出すカナの決意の表れだと感じた。一筋の希望も見える。
この作品は評価が分かれると思うが、個人的には悪くないと感じた。
(追記)
次に読みたい本だ。
・『江戸川乱歩名作選』
・『黒猫・アッシャー家の崩壊』ポー
・『モルグ街の殺人・黄金虫』ポー
ポーは再読。江戸川乱歩は別の短編集を持っているけど、この名作選は知らない作品が多いのと、フォロワーの方が読んでいて面白そうで。こうした怪奇、幻想物を読むと涼しくなる気がする。