『憤死』綿矢りさ

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不思議な、そして不気味な4作品の入った短編集。印象に残ったのは『おとな』と表題作の『憤死』だ。

『おとな』は幼い頃の夢から始まるすごく短い作品だが、半分くらい過ぎたあたりで雰囲気が変わる。最後はよく分からないところがあるが怖い。急に展開が変わる辺りはとても上手いと思う。

『憤死』は女友達が自殺未遂で入院しているのを見舞う話。冒頭で引き込まれて、読まずにはいられない。
平凡だけど自慢しがちな友達とのこれまでの歴史とやりとり、語り手が抱く感情の描写が見事で、特に最後の一文が印象的。
「お姫さま、死ななくてよかった。人には嫌われるかもしれませんが、いつまでも天真爛漫でいてください。」


この作者らしい持ち味がよく出ている作品。

 

「トイレの懺悔室」と「人生ゲーム」はホラーといってもいいような作品。作者らしくない短編で少し不思議な感じがした。