『意識のリボン』 綿矢りさ

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8編が入った短編集で再読。恋愛についての小説が多い作者だが、この作品は恋愛ではなく日常を様々な視点で書いている。


太宰治を思わせる饒舌な独白の『こたつのUFO』が面白かった。作者は太宰治が好きだと書いていたのを思い出した。

『履歴の無い女』はマリッジブルーを覚える姉の話。既婚の妹が語る女性の順応性が印象的、また人生の履歴と携帯の履歴を比較するところは斬新だった。

 

表題作の『意識のリボン』は交通事故に遭い、死にかけた女性が生還するまでの間、これまでの人生の記憶をたどる。
「意識にリボンを結んだら」世界はどう見えるのか、ふくよかな余韻が残る。

全体的に、人生の様々なイベントに直面して悩みながらも、しなやかに対応する女性たちの描写が見事だ。結婚、出産を経験した作者の視点が現れていると思った。


文章は相変わらず素晴らしい。個人的には村上春樹と並んで、最もうまい作家だと感じる。デビューした時からほぼ完成されていたので、これは才能としか思えない。

 

ところでツイッターは字数制限があるけど、うまい人はいる。フォロワーの方にもいて、ブログを読むと素晴らしくて何度も読み返したりしている。まあそういう人は殆どいないけどね。