『百の夜は跳ねて』古市憲寿

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この作者の小説は初めてだ。評論は新書で何冊か読んだことがあるけど。

 

就活に失敗して高層ビルのガラス拭きをしている若い男性が主人公。幻聴に悩み、生きている実感をなかなか持てない。

生まれるのも死ぬのも禁止されている島の寓話から始まる。生死がテーマの一つになっている。

彼は仕事中に知り合った高層マンションに住む老婆から、ビル内部の写真を撮ってきて欲しいと依頼される。2人は会ううちに、互いの孤独、生と死について話すようになるが…という物語。

 

色んな素材-情報や言葉など-を巧みに組み合わせて書いていて、都会のザラザラした感触が伝わってくる。孤独や生と死の境目の言葉が印象的。読後感は良かった。前作の『平成くん、さようなら』も読んでみたくなる。

 

この作品は芥川賞候補になっている。芥川賞の選評をネットで読んでみたが評価は低かった。
個人的にはこの賞は吉本ばなな村上春樹が獲ってなくて運もあると思っているけど。あと舞城王太郎も受賞してないな(舞城王太郎については書いてみたい)。まあ賞は意識せずに次作を書いてほしいと思う。