『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』村上春樹

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先週「村上RADIO」を聴いてたら、ゲストの山中伸弥教授がこの本について話していて、久しぶりに再読してみた。このラジオ番組には他に高橋一生も出ていて、村上作品を朗読していたのだが、とても上手いのに驚いた。

 

名古屋の高校に通う男女5人-乱れなく調和する共同体-の中で多崎つくるだけが東京の大学に進学する。そして大学2年の時に突然4人から絶縁される。

卒業後就職して36歳になった多崎つくるは、恋人の沙羅から、あなたの過去の傷はまだ血を流している、と言われて4人を探す巡礼の旅に出る。

 

青春の喪失の物語で、謎を探し求めるというこの作者の手法(seek and find)が楽しめる。フィンランドに4人のうちの1人(クロ、女性)を訪ねるところがクライマックスで、ここの描写は素晴らしかった。

作者の描く、円熟した小説世界、文体を堪能できる作品だ。そして謎が残るところもこの作者ならでは。
ラジオで山中教授は、多崎つくると恋人の沙羅のその後が気になったようだが、それはまあ、書かれないで終わるでしょう。