『愛がなんだ』角田光代

映画の原作を読んでみた。濃密な片想いの女と冷淡な男(テルコとマモル)とその反対の関係の男女(ナカハラと葉子)、そしてマモルが追いかけるすみれ、という5人の物語。 作者はインタビューで「好きな人ができたら全開で好きになっちゃって、相手に怖がら…

『モダン』原田マハ

ニューヨーク近代美術館(MoMA)を舞台にした短編集。『ジヴェルニーの食卓』に続いてもう1作読んでみた。 登場するのはアンドリュー・ワイエスの「クリスティーナの世界」、ピカソの「アヴィニョンの娘たち」、「鏡の前の少女」、「ゲルニカ」、ルソーの「…

『私の家では何も起こらない』恩田陸

恩田陸が面白いのでもう1作読んでみた。この本もフォロワーの方のお勧めから。 丘の上の幽霊屋敷を舞台にした連作ゴーストストーリー。時代ごとに住人が変わる古い屋敷で、英国だとヴィクトリア朝の屋敷という雰囲気がする。そして生々しく恐怖心をかきたて…

『チョコレートコスモス』恩田陸

『蜜蜂と遠雷』がよかったので、もう1作恩田陸を読んだ。この本にしたのはフォロワーの方のお勧めを参考にして。 『蜜蜂と遠雷』でも感じたけど、この作者は天才を描くのが上手い。後半に向かって盛り上がって、2人の女優-東響子、佐々木飛鳥-のオーディシ…

『ジヴェルニーの食卓』原田マハ

『楽園のカンヴァス』が面白かったので、絵画をテーマにした作品をもう1作読んでみた。 マティス、ドガ、セザンヌ、モネについての4短編。画家の身近にいる語り手によって、彼らの人生の断片が語られる。 どれもよかったが、晩年のマティスを描く「うつくし…

『何者』朝井リョウ

同じ大学に通う5人の就活の物語。大学の劇団サークルだった拓人と、彼の同居人でバンドを引退した光太郎、光太郎の元恋人の瑞月、瑞月の留学仲間の理香と同棲中の隆良が就活のために集まる。自分が何者なのかを就活を通じて模索する姿を描いている。 高得点…

『3時のアッコちゃん』柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』に続くシリーズ第2弾。前から続編を読もうと思っていたのだが、フォロワーの方がブログに載せていて面白そうだったので購入した。 4話の連作短編集でどれも楽しめたが、アッコ女史の登場する前半の2作が特によかったかな。悩めるOL…

『蜜蜂と遠雷』 恩田陸

舞台は日本で開催される国際ピアノコンクール。若手ピアニストの登竜門になっている。 4人の出場者を主役にした物語、群像劇だ。天才の3人-16、19、20歳-と28歳で、こうした天才の話はリアリティを欠きがちだが、設定がうまくてそれを感じさせない。 数多く…

『ヴァン・ショーをあなたに』近藤史恵

『タルト・タタンの夢』の続編。前から気になっていたのだが、最近フォロワーの方が載せていて読みたくなり購入した。創元推理文庫は珍しいけど謎解きだからかな。そういえば『ねじまき片想い』もこの文庫だったのを思い出した。 下町のフレンチレストランを…

『楽園のカンヴァス』原田マハ

積読にあった本だ。 ニューヨーク近代美術館(MoMA)の学芸員でアンリ・ルソーの研究家ティム・ブラウンがスイスの邸宅に招かれる。そこでMoMAが所有するアンリ・ルソーの『夢』に酷似した絵を見せられる。絵の持ち主の富豪から、7日間で作品の真贋を判定し…

『私にふさわしいホテル』柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』の続編にしようか迷ったが、積読にありフォロワーの方のお勧めのこちらにした。 新人作家(本名中島加代子)が、色々な手段で成り上がっていく奮闘をコミカルに描く連作短編集。 全部で6話あるのだが、毎回大物作家(東十条宗典)と…

『騎士団長殺し』村上春樹

突然妻に別れを切り出された主人公の肖像画家の「私」は、友人の父(日本画家)の自宅兼アトリエに住む。そこで次々に起こる不思議な出来事に巻き込まれていく。 物語のフレームは、私と妻(ユズ)が夫婦の危機を乗り越えて、ということだが、本作品は私が過…

『ランチのアッコちゃん』柚木麻子

4編の連作短編集で前半と後半で語り手が変わる。 前半の語り手は三智子で、表題作「ランチのアッコちゃん」では上司のアッコ女史(黒川部長)の提案でランチを1週間交換する。三智子の手作り弁当とアッコ女史のランチコースを交換するのだが、失恋して落ち込…

『格闘する者に〇(まる)』三浦しをん

作者のデビュー作。いきなり童話から始まる。どこかの国の王女がお見合いのために象を選ぶ。象はそれを飼う男性を象徴していて、という話。よく分からないけど、読んでいく内にそういうことなのかな、と思う。 出版社志望の大学生藤崎可南子が就活に苦労する…

『私を離さないで』カズオ・イシグロ

舞台は1990年代末のイギリス。SF的な設定だ。31歳のキャシーという女性が、自分の育ったヘーシャムという全寮制の施設を思い出す。そこでの回想を読んでいくと、自分の知っている学校生活とだいぶ違うことに気づく。 行事や先生の言動が奇妙だ。外部と隔離…

『憤死』綿矢りさ

不思議な、そして不気味な4作品の入った短編集。印象に残ったのは『おとな』と表題作の『憤死』だ。 『おとな』は幼い頃の夢から始まるすごく短い作品だが、半分くらい過ぎたあたりで雰囲気が変わる。最後はよく分からないところがあるが怖い。急に展開が変…

『風が強く吹いている』三浦しをん

『舟を編む』に続いて三浦しをんの作品を読んでみた。フォロワーの方から聞いた本だ。この作品もある物事に真剣に取り組む人たちを描いている。作者のテーマのひとつなのだろう。 下宿(竹青荘)に住む清瀬灰二(ハイジ)が同じく陸上経験者の蔵原走(カケル…

『舟を編む』三浦しをん

国語辞典の編集部を舞台に、辞書編纂にまつわる様々な人間模様を描く作品。本屋大賞を受賞したのは記憶にあったが、当時はこの作者をよく知らなかったこともあって、今回初めて読んだ。 まず、雑誌『CLASSY』に連載されていたのには少し驚いた。このファッシ…

『手のひらの京』綿矢りさ

この作品も谷崎潤一郎の『細雪』を下敷きにしている。こちらは三人姉妹だが。上から31歳の綾香、20代半ばの羽依、20代初めの凜。奥沢家の三姉妹は両親と暮らしている。 まず題名がうまい。「手のひらの」という表現は、周りを山で囲まれた盆地のイメージから…

『あの家に暮らす四人の女』三浦しをん

この作者の作品は初めて読んだ。 谷崎潤一郎の『細雪』を下敷きにしている。『細雪』の四人姉妹にちなんだ名前を持つ4人の女性たちが、古い洋館で共同生活をする。洋館の持ち主の鶴代と佐知は親子だが、雪乃と多恵美は訳あってこの家に暮らす。4人の独身女性…

谷崎潤一郎『細雪』

この作品は以前読んだことがあったが、『手のひらの京』(綿矢りさ)、『あの家に暮らす四人の女』(三浦しをん)がこの作品を下敷きにしていて、再読したくなった。 大阪船場の旧家(蒔岡家)の四人姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子の人間模様、戦前の関西上流…

『かわいそうだね?』綿矢りさ

この本には表題作と『亜美ちゃんは美人』の2作が入っているが、表題作『かわいそうだね?』についての感想だ。 恋人の隆大が元彼女のアキヨ(求職中)を自分の部屋に居候させることになり、いろいろ悩む樹理絵(主人公)の話。ありえないような奇妙な三角関…

ブログ開設/『あまからカルテット』柚木麻子の感想

ブログを開設しました。 これまでTwitter(@takashi65406446)で書いていて、これからもそちらがメインだけど、字数制限があり書ききれなかった本などについてはブログに載せたい。 拙い文章ですが、付き合ってもらえば幸いです。 今回は『あまからカルテッ…